アクセシビリティ

事例紹介:東京工業大学

『動く原色大百科事典』を実現するAdobe Acrobat

21世紀の科学技術をリードする、世界の理工系総合大学へと進化を続けている東京工業大学。国際的リーダーシップを発揮する創造性豊かな人材育成を図るために、工学導入教育e-LearningにAdobe® Acrobat®を活用することで学生の知的好奇心を刺激している。

工学導入教育にe-Learning教材を開発

モノづくりにおける中国やインドなどアジア勢の急追を背景に、日本は「科学技術創造立国」実現に向けた取り組みを展開している。その基盤となるのが、優れた科学技術関係の人材養成・確保だ。

そこで文部科学省では、フロントランナーにふさわしい世界トップレベルの創造性豊かな研究者の養成や人材確保を支援している。その一環として、国公私立大学を通じて学生教育の質の向上などの大学教育改革を促進する「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP(Good Practice))を実施している。

「国際的リーダーシップを発揮する創造性豊かな人材の育成」を使命とする東京工業大学は、この現代GPを活用して工学部を中心に「工学導入教育e-Learning教材の開発」イニシアティブに取り組んだ。大学院 理工学研究科 国際開発工学専攻 高田潤一 教授は、今回のプロジェクトについて次のように話す。

「科学技術の高度化・細分化によって、高校の理数系教育の内容と最先端の研究との溝は広がる一方です。高校までのカリキュラムと大学の一般教育カリキュラム、さらに一般教育と2年次以降のカリキュラムには大きなギャップがあります。そのギャップを埋めないと、1年生は目的意識を持てないまま、あるいは、逆に狭い視野にとらわれて自分の進むべき方向を決めてしまい、学科に進んで後悔することになりかねません。そのギャップを埋めるために、工学導入教育e-Learning教材の開発を行うことにしたのです」

学科選抜を行っていない東京工業大学では、新入生は大学入試出願時に選択した1類(理学部)から7類(生命理工学部)のいずれかに所属する。2年次から、1年次の成績順に希望する学科に振り分けられる。そのため、学科選択は将来の進路を左右する大きな決断となる。したがって、明確な目的意識と幅広い視野を持たせることは大きな課題だった。

印刷クオリティが高くマルチメディアも扱えるAdobe PDFを採用

工学導入教育に取り組む際、問題となったのがコンテンツだ。学生に興味を持ってもらうには、最先端の研究が理解しやすいことに加えて、目を引く魅力的なコンテンツでなければならない。しかし、魅力的なコンテンツを一から開発するには手間と時間もかかる。

そこで、すでに最先端の研究分野の講義でマルチメディアコンテンツを活用し効果を上げている、学術国際情報センターの青木尊之 教授が作成したコンテンツに白羽の矢が立った。

「大学院の講義で計算物理工学を担当していますが、最近の研究分野は学際的で、複数の専攻の院生が講義を受けます。そこで、私はさまざまな専攻の院生でもわかりやすいようマルチメディアコンテンツを使って講義をしています。たとえば、数値流体力学ではスーパーコンピュータを使って現象を解析しますが、計算結果をビジュアライズすることによって専門知識に乏しい学生でも一目でわかるように工夫しているのです。e-Learningによる導入教育に、マルチメディアコンテンツ教材を活用すれば高い学習効果が期待できます」(青木 教授)

2005年6月、現代GPに応募し、10月に正式受理された「工学導入教育e-Learning教材の開発」では、当初、青木 教授のマルチメディアコンテンツをベースにHTMLで開発する予定だった。ところが12月に入り、青木 教授がAcrobatセミナーに参加したことがきっかけでAdobe PDFも教材として追加される。

「セミナーでPDFにマルチメディアを取り込めることを初めて知りました。その場でいろいろ質問をしたところ、実際の教材として使えることがわかり、HTMLとPDFでe-Learning教材を開発することになったのです」(青木 教授)

「HTMLはサーバへのアクセス時間がかかり、利用人数が多くなると遅くなりますが、PDFは一度ダウンロードするだけですからサーバの負荷もかかりません。Flash®による教材も考えましたが、教材として考えた場合、印刷メディアと相性がよく、高品質なPDFのほうが今回は適していると判断しました」(高田 教授)

特別なアプリケーションを必要とせず、誰でも使えるオープンな技術である点も、PDFはマルチメディア教材に最適だった。

  

マルチメディアPDF教材はインタラクティブに結果を見ることができる

万人の目を引くインタラクティブな動画コンテンツを提供

既存のマルチメディアコンテンツを利用できるとはいえ、教材として使うにはインタラクティブな操作を実現するためのオーサリングが不可欠だ。その点でもマルチメディアPDF教材作成のハードルは低い。青木 教授は次のように話す。

「パラメータとそれによって変化するマルチメディアデータをあらかじめ用意しておき、Microsoft® Wordで作成したテキストをPDF化したものに貼り込むだけという手軽さです。パラメータを変えることによって、表や図、動画がインタラクティブに変化します。ただ、パラメータごとのデータセットを用意しなければなりませんのでデータは重くなりますが、任意のパラメータで変化させるための例外処理のプログラム開発を考えると、作業効率は大幅に向上します」

オーサリングはインタラクティブ性を考えながらのクリエイティブワークとなる。そして、操作手順を一つずつ決めていくだけなので、特別なオーサリングツールや知識も不要だ。HTML教材の作業も同時並行で進めながら、マルチメディアPDF教材作成もやっていたので完成まで1週間ほどかかったという。

「陰影つきのコンピュータシミュレーション動画をPDFに入れ込むと、格段にリアリティが向上します。しかも、インタラクティブに動画を利用できますので、その変化を目で確認できます。また、HTMLと違って高品質な印刷ができる点も、マルチメディアPDFのアドバンテージです」(青木教授)

PDFなら、印刷クオリティを保持しながらインタラクティブなマルチメディアよるプレゼンテーションが行えるので、教材だけでなく学会での研究発表にも極めて効果的だ。

マルチメディアPDFのメリットを生かし、さらなる拡大を検討

今回作成された工学導入教育e-Learning教材は、実際に「工学入門講座」の中で活用されている。実際に使ってみた結果、学生の反応も上々だ。

「教材を見た学生は『動く原色大百科事典』と言っていました。使い勝手の面でも、1回ダウンロードするだけですから場所を選ばずに使えます。また、1ファイルのPDFですから、作成する側も使う側も管理しやすい点もメリットです。さらに、セキュアなPDFを利用しますので、著作権やセキュリティも確保できます。これからは通常の講義にもマルチメディアPDFを活用していきたいと考えています」(青木 教授)

「今後はPDF教材を活用した達成度評価にも取り組みたいと思います」(高田 教授)

工学導入教育に活用され、高い教育効果を発揮したAdobe Acrobatは、東京工業大学の強力な教育ツールとして今後もさらなる活用が期待される。

東京工業大学
工学導入教育 e-Learning 教材
所在地:
〒152-8550
東京都目黒区大岡山2-12-1

概要:
120余年の伝統と歴史を継承しつつ、「世界最高の理工系総合大学の実現」「国際的リーダーシップを発揮する創造性豊かな人材の育成」「進化する創造性教育」などを目的とし、21世紀の科学技術をリードする世界の理工系総合大学へと進化を続けている。その成果は、21世紀COE(Center Of Excellence:特に優れた研究教育拠点)プログラムにおいて特段の高い評価を受け、合計12件のCOEを獲得している点にも表れている。

東京工業大学
学術国際情報センター
青木尊之 教授

東京工業大学
大学院 理工学研究科
国際開発工学専攻
高田潤一 教授

「インタラクティブ性のあるマルチメディアデータを活用したPDF教材は、変化を目で確認できる『動く原色大百科事典』です。また、HTMLと違って高品質な印刷ができる点も、マルチメディアPDFのアドバンテージです。百聞は一見にしかず。ハードルは高くありませんのでぜひ取り組んでみてください」

東京工業大学
学術国際情報センター
青木尊之 教授