Inspire ─ インスピレーションがクリエイティブに
直結するセッションの数々
今月号の記事
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新しい技術、手法に触れることで生まれるインスピレーション、そのインスピレーションをカタチにするための技術や手法。Adobe MAX Japan 2007の人気セッションは、いずれもこの循環を感じさせてくれるものばかりです。'Flash in the Can' に由来し、イベントを通じてカナダやアメリカを中心にメディアデザイナー、デベロッパーにインスピレーションを与えるFITCの日本上陸。全セッションの中でも圧倒的な人気を誇った中村勇吾氏によるインタラクションデザインの講演。Papervision3Dに代表されるFlashでの3D表現。そしてユビキタスの原石ともなり得るフィジカルコンピューティングの世界。これだけクリエイティブな密度の濃いセッションが集まるのもAdobe MAX Japan 2007ならではのことです。その様子をぜひご覧ください。
日米インタラクションデザインの競演

日本初上陸となる「FITC」のスペシャルセッション「ドローイングとプログラミングの美しき衝突: The Art of Presstube」で、クリエイタにとって見逃せないビジュアルと聞き逃せないエピソードの数々がJames Paterson氏によって紹介。James氏が1997年に初めて制作したFlashアニメーションに始まり、プログラミングを手がけるようになったことで誕生した、ドローイングがランダムに組み合わされるプログラム化されたアート。そしてペンとトラックボールを使って3D空間に線画が描けるオリジナルのツールまでが紹介。ActionScript 3.0の登場を受け、「ツールがあればリアルタイムで楽器のようにドローイングを見せることができる」という最新のアイデアまでが披露されました。

インタラクションデザインで著名な中村勇吾氏の「インタラクションデザインの実際:アイデアの開発」セッションは、Adobe MAX Japan 2007の中での特に人気の高かったものです。セッションでは中村氏が1999年頃から現在に至るまでに手がけた、多くのインタラクティブな作品をスクリーン上で紹介していきました。そして「反応する快感とは、単純なエフェクトではなくて、前後での状況の落差をいかに作るか」と話します。さらにユニクロなどの事例を見せながら「Webムービーブームへのアンチテーゼとして、なんとなく見ていられるものを作りたかった」「映画の縮小版みたいなものをネットで見せるという発想ではなく、単なるデザインエレメントとして使う」と、ここでもアイデアの源泉となるコメントがいくつも語られました。
Flashによる3D表現の“すべて”が披露

ADOBE CREATIVE SUITE 3 Web Edition TOURにも登壇されたROXIK 城戸雅行氏による「Flash による 3D 空間の創造とメカニズム」では、画面内のパーティクルが富士山、東京タワー、ジェットコースターに変化するサンプルなどを通して、会場に常に驚きを与えていました。セッションの中では城戸氏の制作手法として、LightWave 3Dで作成したモデリングデータに対して、FireworksでPNG画像をUVマッピングし、それをFlash Player上でリアルタイムに視認できる自作ツールが紹介。さらに三角関数を使ったActionScriptの座標変換プログラムについても紹介され、まずは丸暗記から初めて「なぜこれなのか」まで探ってもらえると、なお良いと加えていました。

そしてFlashの3Dエンジンとして世界中から注目が集まっているPapervision 3Dについても、Adobe MAX Japan 2007で開発者の手により詳細が披露。FITCのスペシャルセッションとして開催された「Papervision3D: Flash 3Dエンジンで新しい表現を手に入れよう!」では、Papervision 3Dのコアメンバーの1人であるRalph Hauwert 氏によって、基本概念とサンプル解説、さらに実際に3DStudioMAX上で3Dシーンの作成を行い、それをFlash上で表示させるまでの実演も行われ、そのあまりの容易さに会場からは拍手が起こったほどです。今後、インタラクションを持ったムービークリップを3D化できるようになり、2,000ポリゴン程度でも動作させられる能力をもつPapervision 3D。Flash Playerの将来のバージョンでも3Dグラフィックスをサポートすることもあり、Flashによる3D表現は今後確実にFlashムービーの大きな潮流になることでしょう。
アドビが示す新しい表現プラットフォームの基盤
こうした新しい表現、新しいプラットフォーム環境の土台を支える立場として、アドビからも多くの技術解説が行われました。Adobe MAX Japan 2007で特に印象的だったFlexの躍進。ActionScript開発の裏には必ずFlexが存在しているかのような印象すらもつほどです。そのFlexを担当するシニアプロダクトマネージャーのスティーブン ハインツは「アドビのオープンソース戦略」セッションにおいて、オープンソースへのコミットについて紹介しました。アドビは様々なオープンソースプロジェクトに対して実際のソースコードの提供をはじめ、資金や人材といったリソースの提供も行っています。これはオープンソースの流れをビジネスモデルと捉えるのではなく、デベロッパコミュニティに対するベストサービスであると位置づけているからであり、Adobe Flex Builder Linux の提供や、Mozillaプロジェクトに提供された「Tamarin」(Just In TimeのActionScriptバーチャルマシン)が例として挙げられました。

その「Tamarin」について詳しく解説されたのが「Tamarin プロジェクトとブラウザスクリプティングの革命」です。アドビが寄贈し、Mozillaが中心になって進めているこのプロジェクトでは、1) GeckoのJavaScriptエンジンであるSpiderMonkeyにTamarinを統合 2) 次期Firefoxに搭載されるJavaScript 2の実装を行う「ActionMonkey」3) TamarinをInternet Explorerに統合する「ScreamingMonkey」
4) PythonとRubyとTamarinに統合する「IronMonkey」が進行しています。特筆すべき点は、Tamarin JavaScriptエンジンで実行可能なECMAScript 4が「ActionScript 3ユーザからしてみれば、そこから大きく離れるわけではない」と語られた部分であり、今からActionScript 3.0に親しんでおくことが、将来のJavaScriptの習熟のショートカットとなるわけです。
すでにAdobeLabsでベータ版の配布が始まっている新しいメディア再生ソフトであるAdobe Media Player、そしてサーバサイド技術であるFlash Media Server 3(FMS 3)について、アドビのシニア テクニカル エバンジェリストであるデイビッド デヴィッサーが「Introduction to Adobe Media Player」「Flash Media Server 3- High quality, High Performance, High Security」の両セッションで解説しました。米国のケーブルテレビ局の実に76%がFlash Videoによる映像配信をWebを通じて行っているというレポート、イギリスのBBCがアドビと共同してiPlayerという自社向けのメディアプレーヤーを提供開始した事実からも、Flash Videoによる映像配信の目ざましい普及が伺えます。Adobe Media Playerではさらに押し進め、ハイビジョンクラス映像コーデックの標準規格であるH.264をサポート、RSSによる情報フィードで独自チャンネルを提供できる仕組みなどが語られました。
一方、FMS 3では「高品質」(ハイビジョンVP6, H.264)、「セキュリティ」(RTMPeとSWF認証)、「超高速な起動」といったファクタが盛り込まれています。国内のさまざまなソリューションパートナーで採用されることも紹介されました。世界規模でキャッシュサーバを展開するAkamaiは、Akamai Live! Flashを構築。IIJやJストリームもホスティングパートナーとしてFMS 3をサポートします。また、携帯電話の世界でもFlash Lite3によってRTMPストリーム、FLVダウンロード再生がサポートされます。
PCの枠組みを超えたデバイスへのアプローチ
Flash Lite 3は、モバイルデバイスにおけるWeb体験をさらに高みへと誘う重要な技術です。「ビデオとWebフルブラウザが可能にする新たなモバイルコンテンツ開発と海外市場でのビジネスチャンス」と題されたセッションで、フォーラム・ノキア マーケティングダイレクターのエリック・ジョン氏は「新興国におけるはじめてのWeb体験は、PCではなくモバイル(携帯電話)になると考えられる」と語り、Symbian OSベースのプラットフォーム「S60」にもFlash Lite3の機能を統合させたことで、ビデオコンテンツの閲覧やリッチメディアを取り入れたゲーム、さらに「ノキア端末で見るコンテンツは、モバイル用Webではなく、Webそのものだ」と話しました。「日本には、アメリカから見たら夢のようなアーリーアダプタが存在する」とも話すエリック・ジョン氏。日本の市場、そして日本の開発者に対する期待も大きいといえるでしょう。

PCやモバイルデバイスをも超えた自由なコンピューティングの世界に参加者を誘う「フィジカルコンピューティングへ の招待」セッションは、GainarとFunnelという技術を通じて、フィジカルコンピューティングの実践を紹介する内容でした。Flex Builder 3を使い、わずか十数行のコーディングで、Flashの画面上にあるボタンを押すとLEDが点灯したり、モジュールを傾けると画面上のブロックがまったく同じく傾くというプログラムが、その場でどんどんコーディングされていきます。さらに、フィジカルコンピューティングで「面白い事」を実践する「くるくる研究室」のメンバーによる実践的なデモンストレーションでは、Flashで場所を入力すると、緯度経度を Geocoding APIから把握してコンパスが方向を指す「あっち↑」や、ディスプレイをくるっと傾けると画面の中の小人が傾いた方向に転げ落ちる「神様BOX」、そしてダンスダンスレボリューションのマット上を走ることでかき氷ができあがる「かき氷ジェネレーター」など、インスピレーションに溢れたアイデアが披露されました。
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このように、未来を見据えたアイデアの源泉に溢れたAdobe MAX Japan 2007。今後のEdge Newsletterでは、これらの未来が現実になる瞬間をお伝えしていくのでご期待ください。
◎ここで紹介したセッションの一覧
| B-2 | ドローイングとプログラミングの 美しき衝突: The Art of Presstube [ FITCスペシャルセッション ] |
|---|---|
| Presstube James Paterson 氏 | |
| C-6 | インタラクションデザインの 実際:アイデアの開発 |
| tha ltd.代表取締役/デザイナー 中村勇吾 氏 | |
| E-2 | Flashによる3D空間の創造と メカニズム |
| ROXIK 城戸雅行 氏 | |
| F-8 | Papervision3D: Flash 3Dエンジンで新しい表現を手 に入れよう! [ FITCスペシャルセッション ] |
| Papervision 3D Ralph Hauwert 氏 | |
| A-2 | アドビのオープンソース戦略 |
| アドビ システムズ社 シニアプロダクトマネージャー, Adobe Flex スティーブン ハインツ | |
| B-4 | Tamarinプロジェクトとブラウザ スクリプティングの革命 |
| Mozilla Corporation JavaScript Evangelist John Resig 氏 | |
| D-6 | Introduction to Adobe Media Player |
| アドビ システムズ社 シニア テクニカル エバンジェリスト デイビッド デヴィッサー | |
| C-7 | Flash Media Server 3 - High quality, High Performance, High Security |
| アドビ システムズ社 シニア テクニカル エバンジェリスト デイビッド デヴィッサー | |
| E-1 | ビデオとWebフルブラウザが可能にする 新たなモバイルコンテンツ開発 と海外市場でのビジネスチャンス |
| フォーラム・ノキア マーケティング ダイレクター エリック ジョン 氏 | |
| A-8 | フィジカルコンピューティングへ の招待 Gainer/Funnelで広がるFlash/ ActionScriptの新しい可能性 |
| IAMAS(岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー) 准教授 小林茂 氏 METAPHOR 取締役 増田一太郎 氏 くるくる 原央樹 氏 + 尾崎俊介 氏 + 松村慎 氏 + タナカミノル 氏 |
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